こちらは3つの物語の短編集です。
文庫版は4つないし5つの物語のようですが自分は新刊を読んだので3つです。
そのうち文庫版も読みたいですね。
昔は短編集って物足りなさを感じることが多かったのですが、好みの変化なのか辻村深月が凄いのか、最近は短編集も楽しく読めてます。
1つ目は「しあわせのこみち」。
画家志望と言うほど熱意が持てず、ただそれなりに才能があるために惰性や義務的に絵画を続けている清水あやめが初めて味わう敗北。
あやめに敗北感を味あわせた相手の田辺との出会いと交流、そして自分の殻を破って最優秀賞を受賞するまでの物語。
人間的な感情を捨て去ってひたすら絵画に打ち込んでいたひかりが田辺との交流を通して徐々に人間的な感情を思い出していくのが良いですね。
2つ目は「チハラトーコの物語」
中学生時代に出会ったオタク教師の影響でオタク化した美人モデル?チハラトーコの物語。
嘘を織り交ぜた会話で自分をちょっと特別な存在に仕立てていくわけですが、本人的にはあくまでエンターテイメントと言う扱いで利他的な行動のつもりなわけですが、途中段々怪しくなってきて何のための嘘か分からなくなってきてしまう感じです。
ただ、最後は得意の嘘である人を守りますし、嘘で守ってきたプライドを棄てて前に進んでいきます。
チハラトーコは29歳なわけですが、結構イタイ系キャラで描かれていて好きなキャラですね。
3つ目は「樹氷の街」
合唱コンクールを巡る生徒たちの物語で、ピアニストに立候補した倉田は自由曲の樹氷の街が上手く弾けずにクラスメート全体から悪く思われ、ある日自由曲の楽譜が音楽室のゴミ箱に捨てられてしまいます。
これを捨てたのは誰なのか?指揮者の天木には思い当たる人がいるようですが、そこは一旦脇に置いて自由曲のピアニストは松永郁也に変更されます。
松永郁也のピアノで合唱コンクールの目処がたちますが、その間に各登場人物がちょっとずつ浮き彫りになる感じです。
最終的に天木は楽譜を捨てたのは倉田自身で、自作自演である事、そもそもピアニストに立候補したのは天木へのアピールであること(倉田は天木に3回告白して3回ふられたらしい)等を述べます。
倉田もチハラトーコとは違った意味でちょっとイタイ女子なわけですが、その辺の事情もあって天木は始め倉田をかなり邪険にあしらってる感じです。
最後は気持ちを受けとめるわけではないまでも天木と倉田は友人位の関係性になります。
ちなみに倉田と天木に関して結構書きましたがこの物語自体はどちらかと言うと天木と松永の物語で倉田の描写は弱めです。
辻村作品の女子は割と「自分をちょっと特別と思っててややイタイ系」ですが今回の短編3作の清水あやめ、チハラトーコ、倉田は方向性はそれぞれちょっと違いつつもこのパターンに合う感じで安心の辻村作品といった印象でした。
また、今作の登場人物は結構既視感があるなと思って読んでいたのですが、他作品にも登場している人物が多いみたいですね。
その辺を復習するためにも改めて他作品を読んでみたくなりました。





