2026/10/20

辻村深月『本日は大安なり』ネタバレ含む

 


結婚式をテーマに4組のカップルを描いた話。

ミステリーと言うよりかはドタバタコメディみたいなノリで読める作品かなと思います。

各所に色々物語の仕掛けがありますが、基本的にゆるく楽しく読めるのであんまりドロドロした展開が苦手な人なんかでも楽しめるのではないかと思います。


個人的にはウェディングプランナーの山井多香子と大崎玲奈の話が好きですね。

4組のうち唯一完全にシリアスな展開で読んでいてハラハラしたりもしますしとても良かったです。


辻村作品が好きな方には加賀山姉妹の話が相性良さそうです。

女性のちょっとドロドロした部分が描かれていて凄く辻村深月らしいです。

トリックはベタに姉妹入替えですが、ちゃんと見破られることでこの話を面白くしていると思います。

ここで誰も見破れなかったら加賀山姉妹の話が一番暗い話になったと思います。


他の2つはどちらかと言うとコミカルな方向に振っていて作品全体の世界を拡げる役割なのかなと思いました。

ただ、最後鈴木が良いところを持っていくのは素晴らしい展開ですね。

2026/10/19

辻村深月『オーダーメイド殺人クラブ』ネタバレ含む

 


中学二年生の主人公の女子中学生が文字通り中二病を拗らせたような性格をしており、カッコよく自殺をすることを決意する。

ただ、カッコよく死ぬためには他人の手が必要で同級生のちょっと変わり者な男子を巻き込み計画を進めていく物語です。



個人的には主人公の小林アンの考えていることがまんま今の自分に近くて物語に没入しました。

勿論自分はアンのように「死にたい」とまでは思わないのですが、今生きてるこの場所に強烈な違和感やくだらなさを抱いていると言う点ではかなり共感できました。

巻き込まれた男子中学生の徳川は初登場時はちょっとサイコパス気味な感じでありますが、徐々に人間性が描かれていき普通の中学生とまでは言いませんがそれなりに理解出来る人間になっていきます。

この二人の計画は未熟でそのやり取りの様は見ている方が恥ずかしくなるような面もありますが、そこが逆にデートっぽく見えたりもしてとても微笑ましいです。

最後もとても温かく救いのあるものになっていて、お気に入りの作品の一つですね。

2026/10/15

辻村深月『嘘つきジェンガ』ネタバレ含む

 


3つの「嘘つき」の物語。

こちらは短編集です。

短編ながらどれも濃密で面白かったですね。


『2020年のロマンス詐欺』は辻村作品らしい若者の純真さを描いた作品で凄く青臭い主人公なのですが個人的に好きでしたね。

『五年目の受験詐欺』は裏口入学を扱った話で、でも本当に裏口入学出来てたの?みたいな謎を巡った面白い内容です。

『あの人のサロン詐欺』はとある漫画家が好きすぎて、ネット上でなりすましてしまって、とうとうサロンまで開催するようになってしまった人の物語。

凄くぶっ飛んだ内容ですが謎のリアリティがあってとても面白いです。


読んだのが少し前でストーリーがうろ覚えになってしまっているのでまた図書館で借りてこようかな。

2026/10/12

辻村深月『闇祓』ネタバレ含む

 


辻村作品としては珍しく純ホラーなテイストの作品。

一見短編集かな?と思うくらい各章の繋がりを感じないのですが、最終章でしっかり繋がります。

日常的だけどちょっと「ぞっとする」話や完全にホラーな話まで色々織り交ぜており、それぞれ全く違和感なくて凄く読み応えありました。

実は完全にジャケ借(図書館で借りたので)だったのですが、これは良い作品だったと思います。

2026/10/11

辻村深月『島はぼくらと』ネタバレ含む

 


とある島に住む4人の高校生を中心とした、島で起こるいくつかのちょっとした事件の話。

辻村作品としては比較的緩い雰囲気のもので、作者の得意な?中高生女子のドロドロした心理描写もなく安心して読める作品です。

盛り上がる展開が少なく物足りなさを感じる人もいそうですが、個人的にはかなり好きな部類でした。

起承転結がしっかりしている感じで、最後のシーンもとても好きですね。

2026/10/06

辻村深月『青空と逃げる』ネタバレ含む

 


ダブル不倫をした役者の夫が行方不明になり、その相手(芸能人)は自殺。

残された妻と息子は不倫相手の芸能事務所に追われる身となり各地を転々と逃げる話。


逃げた各所の話はそれぞれ良い話だったりするのですが、肝心の何で逃げるのかって部分の描写が弱くて説得力に欠ける印象でした。

あと本作最大のトリックで「息子が父親の連絡先を知っている」と言うのがあるのですが(妻は知らない)、それなら息子はそんな行動とらんだろとか思う箇所がいくつかありますし、主人公である妻がよくある「物語の展開のために無理矢理アホにさせられた人」みたいな感じでとにかく全体の流れの説得力が弱く感じました。

先に書いた通り各地でのエピソード自体は良いものが多いので余計にこの骨組みに対する違和感は強かったですね。

各地を転々とする展開は『朝が来る』の片倉ひかりパートに近いものを感じましたが、リアリティは圧倒的にあちらが上だと思います。

2026/10/05

辻村深月『朝が来る』ネタバレ含む

 


養子縁組を題材にした物語で、若すぎる年齢での出産により子供を手放すしかなかった女性(片倉ひかり)と、子宝に恵まれず悩み苦しんでいた所に養子縁組の話が来てそれを受けた家族(栗原家)のお話。

前半は養子を迎える家族のパート、後半は養子に出すしかなかった女性のパートでがっつり分かれている構成なのですが、後半が基本的に好きですね。

決して読んでいて気持ちのいい展開ではないのですが「人間の人生はここまで転落してしまうものなのか」と言うのをリアリティをもって描かれています。

反抗期のため若年で家出した結果、未熟な判断能力になってしまい判断結果が悉く裏目なってしまう。

一見「そういうことにはならんだろ」と思うような展開ですが、若年で家出していきなり働こうなどとなったわけで、その結果にも一定の説得力があります。


個人的に最後だけはあまり好きではなくて、片倉ひかりは最後救われない方がよりリアルなのではないかと思ったりもします。

ただ、辻村作品は最後バッドエンドにすることはほぼないのでこんなものかなぁと言う気がします。

ちなみに冒頭、人物のなりすましを感じさせる描写もありますが、辻村作品でそのようなトリックを使用したことは見たことないのでただのミスリードでした。