過去のある出来事を発端として展開する4つの物語の短編集です。
■ナベちゃんのヨメ
大学時代、コーラス部の女子グループに混ざった男子「ナベちゃん」が結婚する。
そのヨメはどうやら凄いらしいぞ、と言う所から始まる物語なわけですが、ナベちゃんはどうやら大学時代はあまり男性として接してもらえなかったらしい。
一方その凄いヨメはナベちゃんを男として認めている。
だからこそナベちゃんはコーラス部時代の仲間を全切りしてでもそのヨメを選んだのだな、と言うのが伝わってきます。
ナベちゃん本人の心理描写はないので、それは女子グループ側の方々の推測ではあるのですが、恐らくそうだろうなと思われます。
■パッとしない子
今をときめくアイドルの高輪佑が母校の小学校にやってくる。
母校で唯一佑在学時からいる松尾美穂はそれをちょっと楽しみにしていたりするわけですが、佑は全くそんな事は思っていなくて、美穂は完膚なきまでに叩きのめされてしまうわけです。
ただ、この話のポイントは過去の事実を誰が正しく認識しているか?と言う点で、実は佑が正しいとも美穂が正しいとも明示はされていないわけで、ある意味双方思い込みに基づいて、或いはわかった上で事実を捻じ曲げて話をしています。
そのため美穂にも言い分があるわけですが、状況的に佑の方が強かったので引き下がるしかなかった形です。
言った言わないや、あったなかったの争いってビジネスとかでもあると思いますがその類の話ですね。
■ママ・はは
クソ真面目な親を持つとどんな親子関係になるのかな?
一見そんな恐ろしさを語った話に見えますが、どうやら過去改竄のファンタジーな話で、記憶の改竄ではなく文字通り過去が改竄されていきます。
リアルタイムにどんどん改竄されていく過去は中々面白く、1個前の「パッとしない子」が胸クソ系の流れを持つので箸休めに良いかなと言う感じもあります。
親子関係の話はちょっと胸クソ系なんですけどね。
■早穂とゆかり
小学校時代、ちょっと「イタイ系」でありつつも今では独特の塾経営で一躍有名人な日比野ゆかりと、主流グループに身を置いていて、現在はマスコミで働く湯本早穂。
早穂は当時ゆかりが「ちょっと浮いていた」と思っていたので会うのに躊躇したりもしていたものの取材を申し込むわけですが、ゆかりの認識は「ちょっと浮いていた」どころの扱いでは無かったようで早穂の認識の甘さを詰めていきます。
最後はこれでもかと言うレベルで早穂は叩きのめされるわけですがまぁそうなるわなと言う気もしました。
「ママ・はは」以外の3作品に共通するのは自分の都合よく過去を解釈する人に対してそうではない認識をぶつけていく展開になる点でしょうか。
だからこそまずは「噛み合わない会話」が発生するわけで「ある過去について」の認識の違いをぶつけられる展開になるわけですね。
それぞれ50ページ前後の短編なのですが、そうとは思えない位グッと引き込むものがあり大いに楽しめました。